Dear Friend - 閑話01
もうすぐ誕生日の話
「恭くんが4月で28歳になるの、マジでガチめのバグでは?」
「それ毎年言うっすよねー。何なら俺まだ高校生みたいに思われてんなって最近思うんすけど」
仕事の合間の閑話休題。
今回の標的は時間指定型のようで、つまりその時間までは手持無沙汰だ。ぼおっと待っているのも時間も無駄になるので、今後のスケジュールを考えようとカレンダーを眺めていて気付いてしまった。もうすぐ恭の誕生日であることに。
初めて出会った頃、律はまだ大学生で、恭に至ってはまだ中学生だった。あれから15年が過ぎて今こうしているなど、あの頃には考えられなかった話だ。自分もそれだけ年齢を重ねたのだなということを考えると、何となく寒気を覚えてしまう。時の流れというものは怖い。
「俺だって大人になったのに! お酒も飲めるし可愛い奥さんも子供もいるのに!」
「隙あらば惚気入れてくるなこの子。いやー……本当びっくりだわ……」
「ふふん。でもまあ、みんなが可愛がってくれてて大事にしてもらってんだな俺! って最近思えるようになった」
「そうだねえ。恭くんめちゃくちゃ手の掛かる子だったし……」
「えー。俺は本気で思ってるんすけど、律さんの方がよっぽど手が掛かる」
「お。喧嘩売ってきたな?」
「ひっこめる、負ける、やだ」
ぶんぶんと真顔で首を振る恭に、わざとらしくにこりと微笑んで。しかし、恭のその意見はあながち間違いでもないのだろう。恐らく、律と恭では「手の掛かる」の種類が違うだけだ。
自分という人間がそれなりに面倒なタイプであることは、律自身も自覚はある。性格なので仕方がないと開き直っていることも、否定をするつもりはない。どちらかと言えば、それほど手が掛からなくなった恭の方が成長しているかもしれないと考えてから、その考えを打ち消した。恭は恭で、今でも無意識で「頼って大丈夫」と判断してしまうと、どこか螺子が外れてしまうところがあるので。
本質的な部分は、きっと出会ったあの頃からお互いに変わってはいない。大人になって、学んで、上手く隠すすべを知っただけだ。他人とも自分とも、どう付き合っていくかを学んだだけ。
「今年の恭くんの誕生日プレゼント、どうしようかなー」
「とうとう本人の前で悩み出したこの人」
「長年あげてるとネタなくなる。欲しいもの聞いてもないって言うしさ」
「んー……まあそれはそうすけど。でも何もらっても嬉しいっすよ?」
「じゃあ仕事あげる」
「絶対喜ばないって分かっててそれ言うのまじでどうかと思う」
「喜ぶって言ったじゃん」
「逆に喜んだら心配しません?」
「それはそう」
ただでさえ、本当は仕事として成り立たない方が平和な仕事をしているので。
何もあげないというのも味気ないので、プレゼント自体はきちんと考えたいところではある。恭は喫煙者なのでライター、灰皿と考えてみても、過去に贈ったことがあるものをまた贈るというのも楽しくない。そもそも割と直近だ。大事に使ってくれているのを知っているので、そこを上書きする必要はない。
お互い、欲しい物は自身で買うことができる身だ。そう考えると、やはりプレゼントというのは気持ちの問題が大きい。
「律さん、女の子のプレゼント考えるのは上手そうなのに」
「どうかなー。でも美味しいごはんとかになってくるよ、そうすると」
「……? え、意外とさらっと言った今?」
「一般論の範囲かなと。てか俺がごはん作るのってあまりにも日常すぎて、恭くんにはプレゼントになる感じじゃないじゃん」
「誕生日スペシャルフルコース!」
「フルコースの意味分かって言ってる?」
「ゆりっぺ今、ごはん作るのとか大変だし。柳川家向けのお食事作ってくれると俺めっちゃ喜んじゃうな」
「それはまあ、確かにアリか」
子供二人の育児をしている状況だ、確かにどう考えても食事の用意は難しい。子供たちが食べられるものと合わせて用意ができれば、それは悪くない選択だ。
――それにしても。自分の誕生日の話だというのに、出てくるのが家族のための話になるのは、本当に恭らしい。
「……いやーいい男だよね、恭くん」
「何すか急に。え、めっちゃこわい……」