Daybreak Prospects - 閑話02
幼馴染の話
「そっか、もうりっちゃん仕事に出ちゃったんだな」
「はい。今年はもう以降秋くらいまでは長期で海外に行かないので、できるだけ片付けてくると」
「あ。そうか、恭のとこ二人目だっけ?」
「そうです。3月初旬頃が予定日で……」
「そっか、楽しみだなあ」
ある日の夕方、桜は茅嶋家が経営している会社の一室で律の幼馴染である白石 悠時と話していた。椿に用事があったのだが、少し会議が長引いているので待ってほしい、と現在椿の部下として働いている悠時に言われたのだ。それが椿からの指示でないことは承知している――桜が来たと聞けば会議など放り出しかねないことは、桜も悠時も分かっているので。
ここ数年多忙を極めている律は、なかなか悠時とは会えていないことは聞いている。こうして時々会社を訪れる分、桜の方が悠時に会っているかもしれない。
「桜は最近は? あ、でも結婚式来月だもんな、準備いろいろあるか」
「あっ、はい! すいません平日で……参加でご連絡くださってありがとうございます……!」
「本当にこれだから曜日関係なく仕事してる奴は、って言いたいとこだけど、桜の誕生日だからその日選んだんだろ、りっちゃん」
「あっ、はい、せっかく4年に一度だからと……」
「何か4年前もそんなこと言ってたよなあ。椿が恐縮してた……っと、呼び捨てたら怒られる」
「今はプライベートということで」
桜の言葉に頼む、と苦笑する悠時は、現在は桜の秘書をしてくれている伊鶴の仕事を随分と引き継いでくれたのは、悠時だったらしい。その方がいいだろうと悠時から申し出てくれたのだと教えてくれたのは椿だった。公私混同で悪いけどと悠時は笑っていたが、かなり仕事がやりやすくなってあの人はすごい、と椿がこぼしていたのを覚えている。おかげで伊鶴もかなり桜の仕事を手伝ってくれていて、いろいろと楽になったのは確かだ。律の仕事量がまだほとんど減っていないことは気がかりではあるが、少しずつ改善していけるだろう。今のような生活を続けていれば体を壊すのが先なことは目に見えている。
悠時は椿と桜を子供の頃から知ってくれている人間だ。そんな相手の部下になって働く、というのはどういう気持ちなのだろうか――と時々考えてしまうのだが、こうして会う度、話す度、この人はそんなことを気にはしないのだろうな、と思わせてくれる。本当に純粋に椿や桜の――ひいては恐らく律の力になりたいだけなのだろう。
「りっちゃん調子どう?」
「正直働きすぎです……私がもう少し手伝えたらいいんですが、律様、基本自分でやってしまわれるので……」
「だろうなー、想像つくわ……。人頼るのへたっぴだからなあ。昔に比べりゃマシだろうけど」
「……今度帰ってきたときお食事会企画してもいいですか?」
「全然いいけど結婚式前でばたばたしてねえかそれ? 桜が無理すんなよって話になるぞ。心配し過ぎて潰れるなよ」
困ったように笑いながら、それでもいいよと悠時は頷いてくれる。何だかんだと30年近い付き合いを続けている律と悠時の関係が特別であることは桜にも分かっているので、少しでも肩の荷を下ろしてくれれば、も思う。
――あとは、芹に本気で怒られると、律は意外と彼女の言うことを聞くので。
「お、そろそろ会議終わったっぽいな。声掛けてくるわ」
「はいっ、よろしくお願いします!」