Phenomenon Breaks - 閑話03
クリスマスの話
「もーいーくつねーるーとー」
「クリスマスに聞きたくないなその歌」
「じんぐるべーる」
「ていうか何でそんな短い節しか歌ってないのに音程一つも合わないの?」
「きっときみはこーなーいー」
「来てくれないと困るし最早歌詞しか合ってない」
逆に上手いんじゃない、と呆れた顔で溜息交じりに呟く律に、あははと恭は笑う。歌がからっきしなのは子供の頃から変わらないので諦めているが、とはいえ姉の影響なのか音楽自体は好きなので。
しかし、二人が今いる状況はとてもではないが歌っていられるような状況ではない。絶賛仕事現場での調査中である。
「クリスマスなんかここ数年サンタさん仕事しかくれないので……」
「もうそろそろクリスマスも仕事お断りしたいところだよね。ホリデーシーズンは休暇です」
「とか言って律さんいっつも書類の山片付けてるじゃないすか。いっそ書類が好きなのかと思うレベルっすよ」
「書類が好きとかどんな生き物だ? ただでさえペーパーレスが叫ばれているのに仕事上紙しか使えないことに胸を痛めてるのに?」
「とかいって律さんパソコン使うのへたくそ」
「まあそうなんだけどさ。仕事で使わないと覚えないよね」
「覚える気がないっつーやつじゃないすかそれ?」
いつものようなやり取りをしながら、恭はふと目に入ったものに手を伸ばす。掌に乗るサイズの小さな木箱。こんこん、と爪で弾いてみれば軽い音が返ってきたが、手に取るとなかなかの重さがある。
それは一見ただの木箱だが、依頼主によると呪詛に使う道具なのだという。木枠の中でパズルのように並び替えて使う道具――が謎のサンタクロースによって子供たちに与えられ、遊んでしまった結果として辺り一帯が「まずいこと」になってしまっているのでどうにかして欲しいという依頼。誰がその道具を子供たちに運んだのかという問題もあるにはあるが、兎にも角にも道具自体を元に戻さないことには現状がどうにもならない。原因不明の高熱等でかなりの人数が意識不明に陥っているような状況なので。
「律さんあったー」
「おっけーあと2個」
「てか揃ったら来ますかねえ、謎のサンタクロース」
「来てくれないと困るんだけどね。俺らの年末年始が吹き飛ぶので」
「やだおうちかえる……」
「うん、これが終わったら帰れるからね、はい手動かして」
「はーい……」
ひとまず遊んでいるうちにばらけてしまった木箱を全て探し、呪詛の内容を正確に把握すること。その為にかれこれ3時間は捜索していたお陰でほとんどは揃ったが、残りが少なくなると今度はもうどこを探していないのか分からなくなる。
「つーかサンタのフリするとか子供使うの本当に最悪っすよね」
「よくある手段過ぎて毎年似たような仕事してる気がしてきた」
「それー……サンタなんていなくなってしまえ」
「憂生ちゃんの前でも同じこと言える?」
「言えませんごめんなさい」
与太話を挟みながら、ぐるりと部屋の中を見回す。おおよそ調べ終わったような気もするが、果たしてどこに行ってしまったのか。既に他の人に回収されていたり子供が隠し持っている可能性も考えられるので、どうしても見つからなければ他の方法を考えなければならないかもしれない。
「来年のクリスマスは日本がいいなあ……」
「覚えてたらね……」