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02
殴られる痛みで目が覚めた。
「いってえ!?」
「お前誰だ!」
「あるじさまはどこですか!」
空気が冷たい。身体に触れるのはひんやりとした感触、ちょっと待てよこれ外じゃないか。酔っ払ってとうとう外で寝てしまったってやつ?そんな大人にはならないと思ってたのに、結構やっちゃうものなんだなあ、なんて。
怒った顔で俺を覗き込んでいたのは、12、3歳くらいの男の子と女の子。顔立ちはよく似ていて、2人とも揃って着物みたいなものを着ている。双子かな、と思いながら身体を起こして。
「……どこだここ……?」
見たことのない場所に、俺はいた。
土地的には高台なのだろう、と思う。そんなに広くはなくて、鳥居があって、俺がひっくり返っていたのは境内の石畳の上。振り返れば賽銭箱と本殿。酔ってたとはいえ神社で寝てたってどういうことだ、俺。昨日のことが全然思い出せない……、何で神社になんかいるんだ。ていうかここどこの神社だ。
元々そんなに神社に興味とかないし、毎年初詣に行く程度のものだから近所の神社も把握してない。
「おい黎明こいつ大丈夫か?」
「もー、またあるじさまの悪い癖が……、何で見張ってないんですか有明のばかぁ……」
「黎明だってそうだろー!?」
「……えっとごめん喧嘩してるとこ悪いけど俺帰るよ……?お邪魔してごめんな?」
朝から元気だなあ。朝っていうか、まだ夜明け前?空は暗い。こんな時間にここにいるということは、神社の子供なんだろうか。
これからのこと考えなきゃなあ、と思いながら鳥居の方へ。鳥居の先には20段くらいの石段があって、酔っ払いの俺はこれを登ったのか、とちょっと疑問に思う。別に入り口とかあるのかな、普段ならそんなに段数ないっていったってわざわざ階段登ってこんなとこ入るとは思えないんだけど。
「あ、だめです!」
女の子の声が聞こえたのと。
「いっだあ!?」
ばちん、と『何か』に俺が弾かれたのは同時だった。
何が起きたのかさっぱり分からない。気が付けば俺はまた石畳の上に転がっていた。背中が痛い、ぎりぎり頭は打ってない。
「出れる訳ないじゃん、さては馬鹿だなこいつ」
「……有明、察するに、あるじさまってば本当に何も説明していないのでは……」
「えっまじで!?何でこんな大事なのにそれで入れ替わったんだあんた!?」
「いや、俺、昨日酔ってて……酔ってた……?」
思い出せない。でも、そうだ、誰かと喋った気がする。誰と何を喋ったか、全然思い出せないけど。
困った顔をした男の子と女の子が顔を見合わせて、同時に溜め息を吐く。仕方ないですね、と呟いた女の子が手を差し伸べてくれて、俺はその手を取って石畳の上に座る形になった。
「まず、ここは暁天神社という場所です」
「……はあ」
聞いたことがない。家の近所にそんな神社、あっただろうか。いや、そもそも興味のない俺が知る由もなかった。初詣はいっつも地元の神社だし。
「私は黎明、こっちは有明といいます。そしてあなたは、わがあるじさまであるこの神社に祀られる神、終宵様の身代わりとなりました」
「……しゅうしょうさま?みがわり?」
「残念ながらあんたはこの神社の神様代理になったってこと」
「……は?」
なんて?